わたしは一生に一度の恋をしました
「あいつは僕の何倍も優しいよ。一見無表情で冷たいように見えるけど、心の中では相手のことを人一倍考えている。だから昔から余計な苦労を背負い込むのだと思うけど」

 この人たちは三島さんと長い時間過ごしてきた。だからわたしの知らない彼の良いところを知っているのだろう。

 わたしにも友達はいた。だが、そこまで仲の良い友達がいないため、羨ましく思えてくる。

 だが、わたしはふと違和感を覚えた。親しい三島さんならともかく、さほど親しくないわたしに借りを作るのは彼的にはいいのだろうか。

「わたしには借りを作っていいの?」
「ほのかは特別だよ。ほのか相手だと、そんな細かいこと気にならなくなるし、素直に嬉しかった。本当にありがとう」

 ほのかと名前を呼ばれたことに少し驚きながらも、飾りもない真一の言葉がとても嬉しかった。彼と話していると心が和んだ。わたしが真一に対して恋愛感情を持っていないから、彼にとって気楽なのかもしれない。

「気にしないで。わたしもそのお茶をどうしていいかわからなくて困っていたから」

「この町に随分慣れた?」

 真一は真っ直ぐと前方を見据え、わたしに問いかけてきた。

「少しは。でも暗い場所とかはまだだめかな」

「この辺りは毎年変質者が出るからね。気をつけたほうがいいよ。あと真一でいいよ。高宮くんって呼ばれると違和感ある」

「でも初対面みたいなものだもの」
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