わたしは一生に一度の恋をしました
「花火を見せてくれたときにはわたしのこと分かっていたの?」

 わたしの言葉に三島さんは笑みを浮かべていた。

「一度見せてあげたいと思っていた。あそこの花火はこの辺りでは一番大きな花火大会だから」

 三島さんはわたしに手を差し伸べる。わたしはその手を掴むと、ゆっくりと立ち上がった。お父さんが居たらこんな感じなのだろうか。わたしは三島さんの手の温もりを感じつつ、そう思っていた。

「三島くんの夢って何?」

 三島さんは苦笑いを浮かべていた。

「普通脈絡もなく突然聞き出すか?」

「知りたくなった」

 ただ純粋に彼のことをもっと知りたかった。その気持ちが何からくるのかははっきり分からなかった。

「泣いているときにそんなこと聞いてくるのは卑怯な気はする」

 わたしは慌てて目に溜まった涙を手の甲で拭った。そんなわたしを見て、三島さんは笑みを浮かべていた。

「俺の夢は獣医だよ」

「獣医、さん?」

「でも俺の家も金持ちじゃないし、私立は大変だから勉強を頑張っている。無難に合格できるとは思う。高校の先生からはもっと上を目指せとか言われるけどな」

 三島さんの瞳はキラキラと輝いていた。わたしにはその輝きが羨ましかった。いつも見ている三島さんとは別人に見え、彼が一番やりたいことだというのが分かる気がした。
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