わたしは一生に一度の恋をしました
「すごいな。自分の夢があるって」

「お前にはないのか?」

 わたしは三島さんの言葉に頷く。

「わたしはいいところに就職して、お母さんを楽させたいと思っていた。だから、安定していて、お母さんのできるだけ傍にいられるような仕事をしたいと思っていたの。自分のやりたいこととか考えたことなかった」

「いろいろあるよな。でもいつか見つかるかもしれないだろう? そのときに精一杯頑張れば良いと思うよ。今の世の中、早いうちに自分の夢を持つほうが有利だけどでも人生に早い遅いはないと思うから」

 わたしは彼の言葉に頷く。彼の真っ直ぐな言葉がとても嬉しかった。



 それから何か特別な言葉を交わしたわけではない。わたしは学校に居るときも、学校を出てからも三島さんと過ごす時間が、日が経つにつれて長くなってきた。自然とそうなったのだ。

 わたしは自分の中に目覚めつつある、心の温もりに気付いていたものの、それを口に出すことはしなかった。確証はなかったが、三島さんも同じ気持ちで居てくれているような気がしたからだ。
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