物語はどこまでも!
ーー
目を開ければ、手元に一冊の本があった。
白く豪華な装丁の分厚い本だ。
本を持ったまま、眠ることはさほど珍しくない。どこの世界だと、彼は表紙を見る。金色の布を纏う天使の絵か。上部には文字が題打ってあるが、彼にとっては初めて見る文字だった。様々な国の本を読む(識る)ことが出来る彼であるため、難無く解読は出来たがこの文字には妙な懐かしさがあった。
「寂しがりやな聖霊へ……?」
懐かしさがある割に、初めて見るタイトルだった。もしかしたら、途方もない時間を生きていく内に記憶の那由多へと消えてしまったかもしれないが、奇妙な本の中身は空白だった。
空白の本など今まで見たことないと言い切れる。ここにある物は少なからず、文字が書かれているものであるが。
一ページ目を開いて、まじまじ眺めていればーー文字が綴られた。
あまりの驚愕だったため、彼には似つかわしくない悲鳴を上げて本を投げ捨てる。
初めてのことに戸惑い、警戒する反面、今まで体験しなかったことに彼の鼓動は早まるばかり。
そっと、一ページを捲れば、先ほどまで真っ白だった紙にはっきりと文字が綴られている。
「はじめまして。私は聖霊『ブック』で、す……?」
はあ?と思いつつ、綴られた文字に彼は目をやる。
『此度、我らが王が世界のため、聖霊のため、人々のため、光臨されることとなりました。かの方の願いは全てのものが幸福に包まれた生を全うすることにあります』
「……」
胡散臭い。そう思ったのも、上手い話には何かしら裏があるとは物語界での常套句。訝しながらも、彼は次のページを開いた。