物語はどこまでも!
山の麓のスタート地点に立つウサギとカメ。もうとっくに勝負を初めていいものの、ウサギとカメは一歩も動いてなかった。
「おい、どうした。やかましいぞ」
「あ、大変大変なの」
「たーいーへーんー」
対照的な喋り方は聞いていて頭痛がするが、それ以上の頭痛の種は子供の泣き声だ。
甲高く、声帯がはちきれんばかりに叫ぶのは小さな女の子だった。
「は?」と声を出してしまう、それを聞いた女の子が顔を上げ、彼に飛びつく。鼻水や涙でグズグズの顔を彼のズボンに押し付けながらなおも泣く。
「ここ、ウサギとカメの話だよな」
うんうんうんと高速で頷くウサギに、まったりと首を上げ下げするカメ。
「人間の女の子なんて登場人物、いたか?」
それはもう、言わずもがな。
先とは違う首振りをしたウサギとカメを確認して、自分の記憶違いの線を消しておく。
じっくりと考えたいが、雄鶏(おんどり)よりもけたたましい女の子がそうはさせてくれない。
黙れと言ったところで、黙らないのが子供。それは子ヤギたちから学んだ。
「あやしてあやして、早く早く!」
「せーれーさーんー、だっーこー」
「なんで、俺がっ」
「かわいそうかわいそう、早く早く!」
「せーれーさーんーでーくーのーぼー」
背が高いだけの役立たず扱いをウサギとカメからされるのは嫌なので、言われたとおりにしてみる、今度は上着が鼻水まみれになった。
そもそもこいつはどこから来たのかなど言いたいことは山ほどあったが、抱っこした拍子に女の子のポケットから一枚の紙がひらりと宙を舞い。
『プレゼントフォーユー。頑張るあなたにご褒美よー』
「あの、クソ聖霊がっ!」
すべての疑問を怒りに変えたのだった。