物語はどこまでも!

「セーレさんは、もうだいじょうぶなの?」

息を呑んだ。

大丈夫か、大丈夫かなんて。

「そんなわけ、ないじゃないか……!君と離れることになるなんて!」

君のための綺麗ごとが剥がれていく。

「一人になんかなりたくはない。別の誰かが来たとしても、もうそれは俺にとっての唯一じゃない……!でも、俺の都合(ワガママ)で君をこの世界に居続けさせることなんか出来ないんだ!俺がいたせいで君はここに……大切な両親と……」

高ぶる感情は強く握られた手のひらから引いていく。こちらの世界では自分しか頼れる人がいないからこそ、か弱い彼女はいつも手を握っていたと思ったけど。

「なかないで。わらうんだよ」

彼を喜ばせるために、握ってくれていた。
それにどうして今更気付くのか。この子もまた、俺にとっての唯一だと与えられていたことに彼は涙した。

この子の言葉にはそぐわない表情だが、人は嬉しくとも涙を流せる生き物なんだ。

出来ることならば、このまま手を離したくはない。けれども。

「カメが言っていたんだ。分からないからこそ未来に期待するんだって」

大切な存在だからこそ、それのために行動したくなるものだった。

ただし先ほどまでと違い、悲観的な気持ちはまったくない。涙で濡れた酷い顔だが、自然と口元が緩んだ。

「いつか、君がもう泣かなくなった時に会えるよ」

「おとなになったら?」

「そうだね。少なくとも夜泣きしない程度まではーー俺も君にまた会えるまで、泣くのを我慢しているから」

約束だと、ゆびきりをしておく。
彼とのゆびきりのあと、女の子は名案を思いついたかのように、ポケットにいれていたクレヨンを手にした。絵本の住人から貰ったものだ。

えーとえーと、と辺りを見回し、白い装丁の分厚い本ーー先ほどまで彼が見ていた落書き帳の白紙(一ページ)を、びりっと。

「ぶふっ」

吹き出す笑いを彼は手で隠すも、力業で破かれた本の無残さが苛つく相手と重なってしまいおかしくてたまらない。

何を書いているのか、覗けば。

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