物語はどこまでも!
「あなたの有能ぶりは彼がいるからこそ成り立つ。そう思う人も少なからずいると思うけど、そんなの実際にあなたを前にしたら誰もが言わなくなるわよ!異例のスピード出世に司書統括の子から散々まだ早いだなんて言われて来たのだけどね、今はぱったりと無くなったのよねー。あれはね、あなたが一生懸命やっている姿を見て『任せられる』と思ったからなのー」
てっきり司書長の性格からして諦めたと思っていたことだったけど、事実は違うと当人は続ける。
「雪木ちゃんの頑張りは誰もが認めているのよ。例え結果がついてこなくても、そこをサポートするのが私(上司)たちの役目。サポートしたいって思うほどあなたが頑張るから、私たちもはりきっちゃうのよねー。たまには休んでもいいのよ?なーんて、思っちゃうほどなんですものー。
あなたはそのまま頑張りやさんでいてね。何かあっても周りがーー特に彼があなたについているから。彼もまたあなたに頼られたくてウズウズしているはずよー?男の甲斐性を奪っちゃ駄目よ?」
いつの間にか、司書長の手が私の頭を撫でてきた。子をあやすそれだが、悪い気分はしない。
もう成人したのに、社会人なのに、けれど認められていたことが嬉しく口元が綻んでしまう。
無能な頑張り屋さんのレッテルは私が勝手につけたもので、その周りには温かな言葉で埋め尽くされている。
「かわいいお顔が大変なことになってるわねー。どうする?午後からのお仕事お休みにしましょうかー?」
甘やかしてばかりな人には、いえ大丈夫ですと返す。
「午前中に半休を頂いたばかりなので」
「あら、そうだったの?ーーああ、今日は確か」
図書館に戻る前に行ってきた場所。事情を知る司書長は初めて、笑顔を崩した。どこまでも悲しそうな顔で。