物語はどこまでも!
「ん?そんなの決まっているじゃないか。小人の一人ですよ」
小人だったー!
「は、え、えぇ……」
どこがっ、と付け加えたくなる。見るからに『小人』じゃない、ただの男前な『大人』なくせに小人を語っている!
「ーーレッド。気をつけることですね。そいつらが図書館の連中である確証はないのですから」
今まで沈黙だった扉向こうからの声。それを聞いた赤髪の青年ーーもとい、小人が扉をトントン叩く。
「だいじょーぶだって、ブルー。お前は心配性だな!優しそうなお姉さんと、あと、久しく見なかった聖霊さんまでついているんだから、平気だって!出てこいよ!」
今から一緒に遊ぼうぜ的な雰囲気で中の人に話しかけていた。
「あ、セーレさんもやはりここの世界に来たことがあるんですね」
「いや、来たことには来たけど……雪木を狙う男はこの世界にはいなかったはずだが」
珍しく首を傾げる彼だった。
話している内に扉が開き、青髪でメガネのこれまた好青年が出て来た。
「レッドは慎重になるべきです。もしも彼女たちが変装していたら?図書館とうそぶいて我々から金品を奪い取る強盗である可能性も大いにある。それは前から申しているはずですが……はっ、まさか!レッド、そもそもあなたが偽物なのでは!?」
「すみませーん、こいつ頭いいのにかなりの慎重派で全てを疑ってかかる奴ですが根は良い奴なんで、許してやって下さい」
青髪をくしゃくしゃしながら、片手でごめんのポーズをする赤髪さん。というよりも、先ほどからレッドやブルーだなんて。
「小人さんたちに名前ってありましたか?」
「あ、いえ、名前はないんだけど、それだと何かと不便で。とりあえず髪の毛の色は七人それぞれバラバラなのでそう呼んでます」
「ブルーと名付けられたのは嬉しいが、そもそも僕の髪色は青色なのでしょうか。藍色とか、紺色とか、日の当て方、見る角度によって色と言うものは変化するのですから、青色などとつけるには色々な検証を経てすべきだったのに!」
間違いなく青色ですから、安心してほしい。分かりやすくていいけれど、赤髪ーーレッドさんから聞き捨てならないことを聞いてしまった。
「みんな、『バラバラ』?」
「そうそう。名前がない分、色でそれぞれの個性を出そうとしたんだろうね。あ、どうせなら紹介しますよ。おーい、みんな!図書館の人と、懐かしい聖霊さんが来てるよ!下りてこいって!」
一緒に学校行こうぜ!的な雰囲気でレッドさんが叫べば、扉からーー
「まずは、小人が三男!あ、長男が俺で、次男がブルーね。えほん、イエローです!」
大きなキノコをマイク代わりにして、一人一人紹介をしてくれるらしかった。
「うぃーす。三男のイエローでえす。趣味はーーあんたみたいな可愛い子を口説くことでえす」
は?と思っている内にイエローから薔薇を渡された。
「マジちょー可愛いじゃん。やべえって、ほんとやべえ!スタイルよくね!?俺さ、今フリーだから一緒にーーぐえっ」
「雪木、ちょっとこいつ、捨ててくるね」
「……なるべく遠くまで行かないように」
ニッコニッコな彼により絞め落とされたイエローはズルズルと森の中へ引きずられていく。
「まったく、イエローは。では、気を取り直して!小人が四男!グリーンです!」
弟が捨てられるのに気を取り直してしまったレッドさんに紹介された緑髪の子はぼうっとした様子で佇んでいる。拭けば飛ぶような小柄で、四男だからか兄たちと違い少年ほどの体躯だった。
「ほら、グリーン。挨拶は?」
「こんにちは……」
挨拶はしてくれたけど、グリーンくんは私とはまったく違う方向を向いている。
「こらこら、グリーン。挨拶は基本だ。図書館の人たちにはお世話になっているんだから、な?」
「風さんに、こんにちはしたの」
ひゅうぅっと、暖かな気候には似つかわしくない冷気が流れた気がした。