物語はどこまでも!
「ははっ、お前はまだそんなこと言っているのか。風が呼んでいるとか、誘っているとか、操れるとか、それが許されるのは14才までだぞー!」
「いえ、レッド。この子は僕たちに見えない何かを捉えていると考えるべきです。この物語外の何か未曾有(みぞう)の危機が迫っていると考えるべきかと。いえ、そもそもこの子がそれらを運んでいる可能性だって」
「風さんたちが、今日はクリームパンだって言っているの」
「後で食べさせてやるからなー。とりあえず整列!図書館の人に挨拶してからだ」
礼儀正しいレッドさんに、もう色んな意味でお腹いっぱいなんだと言いづらく次の人は。
「小人が五男!ブラックです!ーーあれ、ブラックー?どこにいるんだー?ブラックー?」
呼んで探していれば、うるせえとした声が聞こえてきた。
「ぐだぐだうるせえよ、バカ赤兄貴。別に挨拶なんていいじゃねえか。俺は忙しいんだ」
ケッと吐き捨てるかのような物言いで出て来た黒髪のーー
「まあたお前は言葉悪くなって。そんな小さいのに凄んだって誰も怖がらないぞー」
子供をからかう青年の図。額を小突くだけで尻餅をついてしまうほど小さい。可愛い。水色のポンチョと黄色い幼稚園帽を被せて一緒におててを繋ぎたい。
「おい、あんたも俺をガキ扱いしてんな。あんま、舐めるなよ」
無自覚に膝を折って『おいでー』と両手を広げてしまっていた。前の赤ずきんさんの件もあるんだ、申し訳ないことをしたと謝っていれば。
「やる」
ふんっとぶっきらぼうに差し出されたのはクリームパン。出来たてほやほやのパン、まさかの物に戸惑っていれば。
「女子供の面倒みんのは、大人の男の仕事だからな。黙って食べろ」
「あー、お前。なかなか出てこなかったのは図書館の人にパンをあげようと釜から取り出していたのか!」
「そう推測するのはどうかと思いますがね。何せ、パンを焼く釜は小さな子供が火傷しないよう高さを設けております。僕たちの膝丈もないブラックが釜まで手が届くはずが。いえ、そもそも、それは我が家で焼いたクリームパンである確証もないっ」
「風さん言ってたの。幼き子、椅子をずるずる引っ張って、懸命に手を伸ばしてたって」
「ほっこりとした空気で俺を包むな!あと、女ぁ!どさくさに紛れて俺の頭を撫でるんじゃねえ!」
ぺしっと払われた手だけど痛くないです、もちろん。クリームパンをかじりつつ、次の人物を待てば。