物語はどこまでも!
「あー、ごめん。図書館の人、六男なんだけど、今、森に行ってて」
「え、一人でですか」
五男ブラックくんがこんなにも小さいなら六男とてそれ以上に小さく可愛いはず。このどうでもいい小人紹介に胸躍ってきたというのに、まさかのいない宣言とは。
「森のキノコを取りに行ったにしてもーーはじめてのおつかいにしてはハードル高すぎませんか。こんな森ならば鹿はもとより、猪、熊もいそうですし」
「ああ、うん。熊はたくさんいるね」
「なら、なおさら!」
「その熊を狩りに行ったんだ」
へ?と思えば、背中に衝撃。噂の熊に体当たりされた!?と思ったけど。
「あれは駄目だ、あれは駄目だ。見るだけで目から腐る。雪木、雪木、癒してくれ。心身共に重症だ。今一瞬でも君から離れれば、俺は死ねる」
背後霊にも近しい真っ青な彼がいた。
「ど、どうしたんですか!ま、まさか、熊に!?」
血とか出ていないか確認するも特に外傷はない。しかして、彼の顔色は変わらず、私の体に重くのし掛かる。
「もうこのまま、君を連れて帰りたい衝動に駆られる。自身の命の危機が及ぶほど、本気で求めるものが何かというのがよく実感出来る。走馬灯とて君一色だった。そうして君を置いていけるかとここまで来れた。やっぱり俺には君しかいない!このまま監禁してもいいよねぇ!」
「よくないっ!」
混乱のあまり本能に従う彼を制止しつつ、彼がいたはずの森を見る。彼がここまで狼狽するなんて、もしや、とんでもない化け物がそこに!
「……って、これも一種のフラグですよね」
分かっています分かっています。私は彼と違って狼狽えません。どうせ、持ち上げるだけ持ち上げて結局は下らないものに決まって。