物語はどこまでも!
「お、木が次々となぎ倒されていくなー」
「恐らく多分、地響きらしきものが」
「風が止んだ」
「鳥たちが一斉に飛び立ちやがった」
「あなたは何を引き連れてきたあああぁ!」
前言撤回!
とんでもない物が急接近中!
『そそのかし』ですかっ、超巨大化した『そそのかし』が人を丸呑みするためにやってきたと!?
こんな時は逃げるに限るけど、もうすぐそこにーー
「キャワワワー、聖霊さまああぁ、私の愛を受け止めてええぇ!」
地鳴りめいた声が奏でるは乙女の想い。愛した相手との間に立ちふさがる障害(大木)をへし折るは丸太のような両腕。全身を桃色のハートコーディネートで決めるは身長二メートル越えのピンク頭。
「あ、六男のピンクです!」
「ろく!?なん!?」
あれのどこが!との声量が出てこないほど、六と男に使ってしまった。
ブラックくんよりも年下を想像し、さぞや可愛い男の子だろうと思ったのに。
「見つけたわぁ、私の運命の相手!あなたに相応しい相手になるため、あの日、あなたに言われたとおりに!自身を磨きに磨きあげたのよ!どう!この!美しさ!さあ、聖霊さま!私と性別の垣根を超えましょうおおおぉ!」
磨き(鍛え)に磨き(鍛え)上げた筋肉を持った男性もとい。
「セーレさん、よもやオネエさま系にまで声をかけているなんて!」
オネエさま系六男ピンク。ここに来て、最大の個性派がやってきてしまった。お腹いっぱいでもはや吐きそう……
「知らない知らない!あんな怪物に声をかけたことなんかない!」
「そんなっ!はるか彼方のことだけど、私は鮮明に覚えているのにぃ!お忘れなの!?森のオコジョにお菓子を取られて泣いていた私を慰めてくれたあの時を」
「……」
「あ」な顔したよ、セーレさん。
しかしてすぐさま、否定をする。
「い、いや、確か、あの時泣いていたのは小人、で……というよりも、なんだこの物語は!どこにも小人がいないだろうが!かろうじてなのが一人いるだけで!」
ブラックくんが俺も大人だっ、と訴えるのを写真に撮りたいのはさておき、確かに『小人』はいない。
「こらこらピンク、あんまり聖霊さんをこわがーーあ、いや、びっくりさせるなって。お前があんまりにも破壊的にーーじゃなくて魅力的に成長したから、混乱しちゃっているんだ。改めて、自己紹介をしよう!」
「赤兄さま……」
面倒見のいいレッドさんにあやされながら、ピンクさんも整列する。
「さて、図書館の人、お待たせしました!これが今の俺たちの姿です!」
ドヤァと弟たちを紹介されても……。赤、青、黄色(不在)に、緑、黒、ピンクだなんて、戦隊ヒーローか。七人の小人じゃなくて、七人のイケメン戦隊になんと言葉をかけたらいいものか。
「そういえば、人気ある絵本だって言っていたけど……」
これ、か。
確かにこのイケメンたちは人気を勝ち取るだろう。丁寧な紳士的赤に、クールな青、チャラ系の黄色に、不思議系の緑、超絶かわいい黒と、ラストにオネエさま系のピンク。定番から通向けまで幅広すぎるジャンルを取り揃えているのだから。
「お前ら……、ページ外で何をしていたんだ……。下手すれば物語崩壊寸前だぞ」