物語はどこまでも!

「花の園で眠るあなたは、そうか『可愛い白雪姫』と言うのか。呼吸と共に七色の息を吐き出し、お顔全てが日の光を反射するほど神々しく潤い、華美なデザートのような創作性溢れる化粧をされたあなたはーーああ、どうしてこのような場所で眠っておられるのか。美しき女性よ。私は一目見ただけであなたに恋をしたというのに」

ホワイト王子、本当に王子様だったああああぁ!


心の絶叫は、みんな一緒だったろう。何の迷いもなく、横たわる鏡餅ーーじゃない、白雪姫のもとまで行き、童話の一枚絵さながらに美しき白雪姫が目を開けないことに嘆き悲しまれている。

「そこの者。この美しき彼女は、どうして目を開けないのだろうか」

「……へ!?」

あまりの出来事に台詞を忘れているレッドさんだった。ブルーさんが耳打ちして、思い出したかのように言葉を繋ぐ。

「あ、ああ、ま、魔女の毒リンゴで眠ってしまいマシター。彼女はもう、一生目覚めることはないデショー。シクシク」

大根役者でもこの際目を瞑ろう、そうしよう!全てをお許しになるホワイト王子様が気にせず、「そんな、ことが……!」と返して下さるのだからいいに決まっている!

小人さんたちがみんなして、シクシクと涙を言葉で表現している中、王子様は本気で涙を流している。天気雨に打たれたタオルのように周りに悲しみを与える涙だった。

「神はなんて残酷なのか。こんな、奇跡にも等しい美しさを持つ彼女に呪いをかけるとは。ああ、可哀想に。せめて、許されることならば私はあなたと結ばれたかった」

憂いを帯びた唇が、白雪姫へと近づく。
定番の目覚めのキス。誰もが羨むキスなのに、王子様が口付ける前に掃除機がごとく唇を合わせる白雪姫は性格まで変わってしまったらしい。

おおよそながら、口付けの音に似つかわしくない。カレーは飲み物だっと豪語するかのような吸い取り音がする中で白雪姫は目を開けた。

「お、王子様ー!や、やっぱり、私には、ふひー、あなたしかいないわー!こ、こんな私になっても愛してくれているなんてー!」

「美しい人よ、あなたはどうあっても白雪姫(美しい人)のままだよ。さあ、結婚式としようか。そうしてまた、私と出会えるその日まで待つとしよう」

王子様は、どこまでも王子様(イケメン)だった。あまりの言葉に小人たちも芝居泣きから、本気で泣いている。自分たちは白雪姫を本当に愛していなかったんだと。ごめん、おめでとうと白雪姫の周りを囲んでの祝福。既存の物語とは違う感動を目にした気がした。

「セーレさんが言う本当の愛を、初めて見た気がします」

「本当の愛なら、いつも見せているつもりだけどね。まあ、あいつの愛もかなり深いけどね」

そうでしょうそうでしょうと頷いていれば、白雪姫を真に愛するホワイト王子がやってきた。白雪姫の口紅でべとべとになった顔を拭きながら。

「図書館の方と、ああ、聖霊さんまで来てくれたんですか。ご足労おかけします。まったく、与えられた役割も満足にこなせない腐ったインク(奴ら)ばかりで申し訳ありません」

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