物語はどこまでも!
「ようこそ、完結された悲劇へ」
その手を取ることはしない。払う真似はしないが、拒絶の色を言葉に込めた。
「あの子を返してあげて下さい」
「その前に君を眠り姫にしなければならない。自分の意思で簡単に戻ることが出来てしまうからね。あの子を解放した後、あちらの世界に逃げられては嫌なんだ」
「ここにいます」
「……。いいよ、セーレもいるし、君がこの結末を見ずに逃げることはないだろう。君はきっと、“見捨てはしないさ”」
斧を近くの切り株に刺し立てかけ、ウィルは笛を取り出す。一節もない音色を奏でれば、少女は目覚めた。
キョロキョロと辺りを見回す少女。ウィルと目が合いーー
「もういいよ、ありがとう」
そう声をかけられるなり、女の子は頷き、姿を消した。
「悪魔に騙された哀れな少女だよ、あちらの世界で怒らないでやってくれ」
二人のやり取りを考える前にウィルはそう言った。
「さて、次のページに移ろうか」
言うなり、ウィルは私の首もとに斧を添えた。彼が今にも飛びかかってきそうな声が聞こえるが、何も起こらず、必死に歯を噛み締めるような気配を感じた。
「あなたの言うハッピーエンドとは、自分を殺してもらうことなんですか」
「言ったはず。それは昔の願いだよ。まあ、今の願いが叶わなければそれでも良いと思っていたけど。結末は決まった。セーレと、そうして『図書館』(雪木)がいれば後はーー」
役者が揃ったと言わんばかりに、ここに来て新たなる役が現れた。
物語の終盤には相応しい。全てに終わりを感じさせるものは、
「来い、『そそのかし』!」
怪物。
黒き異形が洞窟の中から群れを成してやってきた。