物語はどこまでも!
「なっ!」
もはやそれが『そそのかし』と呼べるモノかどうか判断もつかない。
手のひら大のものなど一匹もおらず、群れるそれらは人と同等の大きさになっていた。
型は芋虫にせよ、あれほどの大きさであれば例えようがない。うぞうぞと、ウィルの号令一つで集まった怪物(それ)らは次の命令を今か今かと待ちわびている。
「お前がなぜ、これを!」
驚愕したのは彼も同じだった。
巨大となった『そそのかし』は見ていたが、こうして群れ、物語の住人に付き従うだなんて。
言うなれば『そそのかし』は絵本の住人たちを操っていたようなものではないか。願望という栄養素を手に入れるため、住人たちに近づいていた奴らが。
「そそのかして、やったんだよ」
その願望を見出された上で、ここにいる。
「『そそのかし』の話は聞いていた。どこからともなく現れる虫だと。僕のもとに来た『そそのかし』も同じだったよ。とても小さな虫で、こんなものに言いくるめられる奴の気が知れないと思った。あの時の僕はただただ、死にたくてたまらなかったからね。『そそのかし』とて、僕ごと消えてしまう前に別の物語に行けばいいものの」
その時のことを思い出したのか、ウィルは一瞬、目を細めた。
「湖に身を沈める時、そいつは言ったんだ。ーー『叶わないならば、終わりたい』って」
憐憫に満ちた目は、洞窟の闇の奥へ向けられ。