物語はどこまでも!

「いっ……!」

収まったはずの頭痛がぶり返す。それに呼応し、また覚えない光景が浮き出てきた。

先ほどから、幼い私が出てくる。
泣く私と、それをあやす“誰か”が。

「私、はーーどうすれば!」

「知らんな。だからこそ、思ったままに行動すれば良い。当たりも外れも気にすることなく、思いついたことをするんだ。ーー片っ端から!やれること全てを!そうして」

止める間も与えずに、彼女は。

「ここは、私に任せろっ!」

批判することは出来ない果敢が無謀に挑む。


もう声も届かない場所に行ってしまった彼女をマサムネは追おうとするが、制止し、私に向き直る。

「そ、某はノノカに忠義を誓う聖霊。ノノカの言葉が絶対でありまする故ーーソソギ殿のお供をしまする!」

涙を流しながら、野々花の言葉に従うマサムネを前にして、私も彼女を止められなくなった。

やるしかない。やれること全て、可能性の一つ一つを試していくしかない。

「彼に会いに行きます。そのためにはまず、私の部屋にっ」

後ろ髪を引かれる思いがないと言えば嘘だけど、その証拠に後ろを振り返ってしまうほど馬鹿だけど。

「お前の旦那に言ってやれ!この程度も倒せない男に、我が親友(戦友)を任せられないとな!」

それ以上の馬鹿もまた、私を見ていた。
目の前の敵をそっちのけで、“無事に逃げられたか”と確かめるような親友はどこまでも凛々しく見えた。

外へ出たと同時に出口が大木で塞がれる。野々花が命じたのだろう。これでもう、後戻りは出来ない。

「ソソギ殿!」

「分かってます!」

進むしかない。
いつも使っている水平エスカレーターは先の騒ぎで壊れるため、この足を使って走るしかない。走り続けても古城まで五分はかかる。それでも全速力で駆け抜けるしかない。

「うわっ!」

と、思った矢先に躓く大馬鹿!
日頃の運動不足に嘆く代償は顔面からの着地なのだけど。

< 94 / 141 >

この作品をシェア

pagetop