君と、ゆびきり
そう思うのに、青の顔がどうしてもちらついて見えてしまう。


青と付き合っていた頃の自分を思い出す。


体調も改善され、部活動でもある程度活躍できるようになっていた頃だった。


人気者の青の存在は、あたしにとってとても大きかった。


どちらかというと内気で、人に迷惑をかけないように生きて来たあたしが、自分のためにもっと我儘になろうと思えた。


青はとても自由に生きていて、自分の好きな事を好きだと自信を持って言える人だった。


「どうしたの?」


携帯電話を握りしめたままぼーっとしていたあたしに、お母さんがそう声をかけて来た。


「ううん、なんでもない」


「友達に誘われた?」


そう聞きながら、お母さんがあたしの隣に座った。


間の鋭さにドキッとする。


さすが、あたしを生んだ人だけはある。


「まぁ……」


曖昧に返事をしてほほ笑む。
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