君と、ゆびきり
ノックを3回。


返事が2回。


またノックを回。


懐かしいやりとりに、ふっと自分の頬がほころぶのを感じた。


そっとドアを開けると、風がベッドに横たわりこちらを見てほほ笑んでいた。


「風……」


あたしはベッドに近づいていく。


風はあたしを視線で追いかける。


前回よりも、更に細くなってしまった風の体。


そこにあったはずの筋肉はもう随分と消えていってしまっているようだった。


風を見ていることは辛かったけれど、今日は嬉しい報告をしに来たのだ。


「風、あたし大学に受かったよ」


それは北風が強い日だった。


風のために。


自分のために。


病気で苦しむすべての人のために。


あたしは更に勉強を突き詰める事に決めた。


そして行われた入学試験。


あたしは今まで勉強してきた知識をすべて出し切ってきたのだ。
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