拾われた猫。Ⅱ
佐之が体を支えてくれたけど、抱きとめるようなその体勢に固まってしまう。
体を動かそうにも、力が入らずに必然的に体重を預ける形になる。
「あの…、佐之、……ありがとう」
何かを言おうにも何の言葉も浮かばず、とりあえずお礼を言った。
上から私を見下げる彼の笑みはいつもとは違っていた。
大人びた微笑みとは違って、子供が悪戯を思いついたようだった。
「ちょっと…離して」
瞳を合わせておくのは堪らなくて、下を向きながら胸板を押す。
けれど、それに伴って私を支える腕はどんどん強くなっていく。
少しして腕が緩んだと思えば、片手は膝の関節に回って横抱きにされる。
「わぁ…!」
素っ頓狂な声もお構いなく、そのままの体勢で縁側に腰掛けた。
佐之の膝の上に乗せられるというだけで顔から火が出そうなのに、縁側は人に見られやすい。
佐之の考えが分からず、遠慮がちに顔に視線を移す。
満足気な佐之は額に目を向けた。
「総司の奴…」
呆れたように笑う彼の表情は大人びたものに戻っていた。