イジワル社長は溺愛旦那様!?

そして振られてしまったら、およそ立ち直れない。きっといつまでも引きずるだろう。
そんなことになると朝陽含め、最終的に神尾にだって迷惑をかけてしまう。


(こんなふうに人を好きになったのは久しぶりなのに……)


結局夕妃は、自分の気持ちを選べない。


「夕妃さん……」


うつむいたままの夕妃がこんなことを考えていると神尾にわかるわけがないのだが、それでも夕妃の迷いは神尾に伝わったようだ。


「急にすみませんでした」


神尾はそう言うと、夕妃の頬を手のひらでそっと撫でて体を起こす。

この一瞬で、それなりに感じ取るものがあったらしい。

あんなキスを受けておいて、悪いのは自分なのに、そんなふうに相手に気遣わせない。

相変わらずおそろしく勘の鋭い人だな、と思いながら、夕妃もバスタオルを押さえながら体を起こし、うなずいた。


(やっぱり今日にでも、出て行こう。夜が明けたら、どこかのビジネスホテルにでも朝陽くんと一緒に行こう……)


だが、神尾はなかなか部屋から出て行こうとしなかった。

それどころかベッドに座りなおして、夕妃の顔を覗き込んでくる。

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