イジワル社長は溺愛旦那様!?

昨晩、自分が臆病なせいで神尾を受け入れられなかった夕妃だが、なにを思ったのか神尾は、『あきらめませんから』と宣言したのだ。

そして『あなたが憂いなく俺のものになりたくなるように、努力しますので』とも、言い切った。
それはいったいどういう意味なのだろう。

けれど夕妃がいくら考えたところで、神尾がどうしたいかなんて思いつくはずがない。

おかげで夕妃は一睡でもできなかったのだが――。

依然、神尾は夕妃の背後に立ったまま、コーヒーを飲んでいる。


(神尾さんがなにを考えているのか、全然わからない……!)


なんとか心を落ち着かせ、ちらりと振り返ると、にっこりと微笑まれた。


「よかったら僕の名前を書いてもらえませんか。神尾湊といいます。神様に尾っぽ、そしてサンズイにカナデで、湊です」


(みなと……)


彼らしい、涼しげできれいな名前だと思った。
これで彼のフルネームを知れたことになる。


【神尾湊】


意識して丁寧に書いて振り返ると、

「ありがとうございます」

嬉しそうに目を細める神尾と目があった。


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