イジワル社長は溺愛旦那様!?
(まさかの……チェーロ!)
そう、そこは夕妃が以前手袋を忘れたあのお店だ。
まさか朝陽の先輩の実家だとは思わなかった。
思わず手袋をしている手を握りしめた夕妃だが、朝陽は「見つかってよかったー」と、足取りも軽く歩いていく。
「あ、ちょっと待ってってばー」
慌てて弟のあとを追いかけた。
朝陽がドアを開けると、カランコロンとドアベルが鳴った。
「いらっしゃいませー」
奥から若い男性の声が聞こえる。
「あ、来た来た。朝陽、久しぶりだな」
同じ声だ。どうやら彼が朝陽の“先輩”らしい。
「すみません、先輩。これお土産ッス」
朝陽が持っていた紙袋を差し出す。
口調がいかにも後輩だが、その声音は優しい。昔からいい関係を築けているのだろう。
(朝陽くんは私と違って友達たくさんいるからなぁ……)
ぼっちというわけではないが、子供の頃ならまだしも、大人になってからは心からなんでも話せる親友のような存在は、夕妃にはいなかった。