イジワル社長は溺愛旦那様!?

「か……かれし?」


一瞬なにを言われたかまったくわからなかったが、ハッとした。

どうやら澄川は、一緒にいた朝陽を彼氏だと勘違いしているらしい。

確かに多少顔立ちが似ていると思っていても、ふたりを見て姉と弟だと思う人はなかなかいない。
恋人同士だと思う人がいても当然だろう。

朝陽は当然弟であって彼氏ではない。
そして彼氏はいないが夫はいる。

それは自分たちが務めているエールマーケティングの社長である、神尾湊だ。

だが、それをこんな場で問い詰められて答えるわけにはいかない。

夕妃はなんだか複雑な気持ちになる。

だが、すでに酔っぱらっているらしい、向こうのテーブル席の同僚が、

「いいぞもっとやれー」

とはやし立ててくる始末だ。


「いや……あの」


(なんで私の彼氏がどうって話に……? 面白がられてるのわかってて、答えなくちゃいけないの……?)


夕妃は困ったように視線をさまよわせた。


朝陽はまだトイレから戻らない。
いや、戻ってきたら来たでなんだか面倒なことにもなりそうだ。可愛い顔をしてはいるが、案外短気なところもあるし、澄川は明らかに酔っている。
怪我でもさせたら双方にとって大変な事件になってしまう。


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