イジワル社長は溺愛旦那様!?

(なんで、どうして!?)


夕妃の頭はすっかり混乱していた。

なぜ突然、今になって寮に入ると言い出したのか、朝陽の意図がつかめない。

たしかに今日、朝陽は『もっと自分のことを考えろ、いつまでも世話になっているつもりはない』と言ってきたが、それはもっと先の話だと思っていた。

今回の寮に入るという考えは、自立云々という話にはとうてい思えない。

それに、今すぐではないと言っていたではないか。あれは嘘なのか。

自分たちはたった四年とはいえ、誰よりも支えあって生きてきたはずなのに。

大事な弟に余計な気を使わせているような気がして、夕妃の目に涙が浮かんだ。


(どうして離れようとするの!)


「げ」


朝陽は涙目になる夕妃を見て、目を丸くする。


「なんで泣くんだよ。そういうんじゃないんだって」


(じゃあどういうんだっていうのよっ! バカ! 朝陽くんのバカーッ!)


夕妃は無言で唇をかみしめ、そのまま隣の朝陽の肩や腕のあたりを、バシバシと叩いていた。


「いてっ、痛いって、暴力反対っ!」


するとテーブルを挟んだ向こうに座っていた湊が、

「――夕妃さん、朝陽くんの話を聞いてください。きっとあなたが思っているようなことではないと思いますよ」

ソファーから立ち上がって、夕妃の腕をつかむ。


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