イジワル社長は溺愛旦那様!?
そして朝陽は、しっかりと夕妃の目を見た。
「姉ちゃん、俺、寮に入って学内から推薦貰う。先生に相談したら、それが一番の近道だって。実際うち、苦学生だし。寮に入れば推薦受けやすいっていうのは、事実なんだ。奨学金も……たぶん、貰える。そういう基金がうちあるんだ。前々からそういう話、先生からされてたけど、寮に入ったら姉ちゃんひとりになるって思ってて……相談しなかった」
その一瞬、朝陽は泣き笑いのような、困った顔をした。
「――なんか俺も姉ちゃんも、お互いのこと考えてるようでそうじゃなかったかもって」
(朝陽くん……)
弟の言葉に、夕妃は頬を力いっぱい張られたような、そんな気分になった。
四年前、母に捨てられた朝陽を見て、自分がしっかりしなければと思った。
家族なんだから、たったひとりの姉なのだから、自分が両親の分も朝陽を立派に育てるのだと、心に決めたはずだった。
だがその決意が、姉の献身が、朝陽を遠慮させてしまったのだ。
(ごめん……ごめんね、朝陽くん……)
朝陽は未成年かもしれないが、十分大人だ。
もう、彼はファミレスで泣いていた子供ではない。成長した一人の青年なのだ。
そのことに気づいて、夕妃の目から大粒の涙があふれて、零れ落ちる。
それを見て朝陽がまた困ったように笑った。
「あー、ほらほら、また泣いて。あんまり泣いたらブスになるぞ」
(ブスって失礼な!)
夕妃はティッシュで涙をぬぐいながら、キッと朝陽をにらみつけたが、肩をすくめる朝陽の目も少し赤くなっていることに気が付いて、また涙があふれた。