イジワル社長は溺愛旦那様!?
目を閉じれば、十四歳のときの、初めて会ったときの朝陽の顔を思い出し、一緒に暮らした四年間の、悲喜こもごもが思い出されて、胸がいっぱいになったのだ。
(悲しいわけじゃない、朝陽くんが自分の意志で決めたことなんだから、それはすばらしいことなんだから……立派なことなんだから)
そうわかっていても、涙が止まらず、まるでこれでは娘を嫁にやる父親のようだと、自分を叱咤激励したばかりだ。
こっそり泣いていたはずなのに、まさか気づかれていたとは思わなかった。
湊の指摘に夕妃の顔が真っ赤になる。
「悲しい、わけじゃないけど、ちょっと……その……」
「ああ、わかるよ」
湊はうなずいて、うつむく夕妃のあごさきを持ち上げる。
「夕妃はこの四年間、母親で父親だったんだからね」
そして指で、すりすりと目の端をなぞる。
「頑張ったね」
そして夕妃の体をしっかりと両腕で抱きしめる。
その優しいいたわりに、じーんと夕妃の胸は熱くなった。
「ありがとう……」
それから湊の出勤を見送る。
湊も今日の夜のために、早めに帰ってきてくれる。