イジワル社長は溺愛旦那様!?

それから数日後、朝陽の入寮前日の朝。
朝練に行く朝陽に大きなお弁当を渡しながら、夕妃は学生服の袖をつかんで引き寄せる。


「今日、三人でごはん、だから」
「はーい、了解! ごちそう作って待ってろよ!」
「待ってろよって……」


どちらかというと、『ごちそう作って待ってるね』と、夕妃が言うのが正しいんじゃないんだろうか。

夕妃がクスッと笑うと、朝陽がワハハと笑う。

朝陽は「早く帰る」としっかりとうなずくと、夕妃の頭をくしゃくしゃと撫でて元気よく飛び出していった。

それからしばらくして、今度は身支度を整えた湊がキッチンに姿を現した。


「おはよう、ございます」
「おはようございます」


湊はにっこりと笑って、それから夕妃の腰に手をあてて体を引き寄せる。


「昨日、ベッドの中で思い出し泣きしてたみたいだけど、大丈夫?」


今はすっかり渇いてしまった、夕妃の頬を指でなでる。


「っ……!」


昨日は、ふと夜中に目が覚めて、朝陽のことを思い出し、切なくなり、泣いてしまったのだ。

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