イジワル社長は溺愛旦那様!?
すると桜庭は目を丸くして、夕妃の一万円札を見て、鼻で笑った。
「そういうポーズはいらないから」
「……え?」
「なんかさ、時々いるんだよね。俺に気に入られたくて、そういうことする女の子。でもね、俺はそういうのいいから。ちゃんとわかってるから」
「……」
夕妃は言葉を失った。
黙り込んだ夕妃を見て、桜庭はまた嬉しそうに笑う。
「ね、俺はそういうの割り切ってるからさ。いいじゃん。金もあって、コネもあって、たぶん一緒にいてすごいお得だよ。三谷さん、友達に自慢できると思うよ」
ワインを開けて、いつもより饒舌になった桜庭は、夕妃の目に、どこか空虚に映った。
「俺の女になりなよ。たくさん可愛がってあげるし、甘やかしてあげるよ。まぁ、もちろんそういう女の子は、 “夕妃”ひとりじゃないけど。別にいいでしょ。おたがいひとりなんて、重いだけだし、人間関係、美味しいところだけつまんで生きていくのも、ありだと思わない?」
「――」
夕妃は無言で、桜庭を見上げた。
桜庭の背後をたくさんの車が走り抜けていく。
ヘッドライトの残像が、桜庭の端整な顔の上を走って行く。
「そういうの、いけないと思います」
夕妃は思わず、そう口にしていた。