イジワル社長は溺愛旦那様!?
翌朝、いつものように事務所に入ると、なんと、桜庭がいた。
夕妃のデスクはカウンターに一番近い手前にある。
営業部のデスクの島は、奥にあり、普段はまだ誰もいない時間なのだが、桜庭の上だけライトがついていた。
「おっ、おはようございます」
夕妃はおっかなびっくり挨拶をして、それから部屋全体の電気をつける。
「――」
桜庭はちらっと夕妃を見ただけで、返事はかえさなかった。
(無視された……)
別に好かれたいわけではないが、あからさまに嫌われると少しばかりへこむ。
昨日の今日で、どう思われてもいいと割り切れるほど、夕妃は強くなかったが、仕方ない。
デスクについて、いつものように軽く事務所の掃除をし、それから花瓶の水を換えるために給湯室へと向かった。
そして花瓶に新しい水をいれ、さて戻ろうかと花瓶を抱えかけたところで、
「ちょっと」
いきなり背後から声をかけられ、「きゃあっ!」
驚いた夕妃は悲鳴をあげ、あやうく花瓶を落としそうになった。
(あ、あ、あ、あぶなかったっ……!)
心臓がバクバクしている。
夕妃は花瓶を流し台に置いて、振り返る。
そこには出入り口を塞ぐようにして桜庭が立っていた。