イジワル社長は溺愛旦那様!?
――けれどスゴスゴと戻った机の上には、会社の茶封筒に入れられた一万円が置かれていた。
桜庭だとすぐにわかったが、もう彼は仕事を始めていて、始業時間になるとすぐに外回りへと出かけて行ってしまった。
(お金、返されてしまった……)
ということは彼のおごりになってしまうが、今さらこれを返そうとしても桜庭は受け取らないだろう。
それにまた、気持ち悪いとでも言われたら、ショックの二乗だ。
(今回はごちそうになったということで、いいか……。朝陽くんにお肉食べさせてあげよう)
夕妃はその一万円をありがたくバッグにしまった。
それから何事もなく一週間ほど経ったある日。夕妃は朝一番に、社長に呼び出された。
社長と言っても、たぬきの置物に似た優しいおじさんで、普段からわりと気安く話をしている。
四十を超えて出来たという高校生の娘がいて、誕生日が近づくと、今の子はいったいどういうものを欲しがるのだろうと、ひそかに相談されたこともあった。
今回も似たような相談だろうかと、そんなことを考えながら、社長室のドアを叩く。
「どうぞー」
「失礼します」
夕妃が社長室の中に入ると、応接間のソファーに座るよう言われた。
「えーあー単刀直入に聞くけれども」