イジワル社長は溺愛旦那様!?

最初はただのつまみ食いだった。
とりあえず目の前に女がいたから適当に、なんとなく思い付きで口説いただけで――桜庭自身、夕妃に好かれようなんて、まったく思っていなかったはずだ。

純粋に、夕妃が、モデルと付き合うような男に、身分不相応なレストランに連れて行ってやると言われて、喜ぶと思ったのだろう。

改めて、もう一度わざわざ誘ってきたときも、好意なんか持っていなかったと思う。

むしろ、支払いをしようとお金を差し出した夕妃を鼻で笑ったあたりから考えると、――おそらく桜庭は、ああやって普段から、女性を見下すことに喜びを見出しているのかもしれない。

彼はむしろ夕妃を貶めたくて、誘ってきたようにしか思えない。

だから一貫して、あんな態度だったのではないかと、夕妃は感じていた。


(それでも私は、彼を拒んだ……考え方が違うということを……口にした)


二度拒まれてようやく桜庭は、夕妃個人のパーソナリティに興味を持った。

そしてこの展開だ。

だから好きになったなんてありえない。きっとなにか理由があるはずだ。
その理由を、きちんと桜庭に問いたださなければならない。

夕妃はきゅっと唇をかみしめて、そのまま事務所に戻る。


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