イジワル社長は溺愛旦那様!?

待ち構えていたかのように、桜庭が夕妃のデスクに座っていた。


「桜庭さん……」


気を緩めると、声が震えそうになる。


(この人を怖がっちゃだめだ……)


ぎゅっとこぶしを握り締めながら、呼びかけると、桜庭はふっと笑って顔をあげた。


「顔、真っ白だね。聞いた?」
「はい……」


桜庭は長い脚を組み、ゆらゆらと椅子の上で体を揺らしている。


「どの国だって……あの、自由の国と言われるアメリカですら、結婚してやっと一人前みたいなところはあるんだよね」
「……」
「結婚したら、本社に戻してくれるってさ。海外赴任もさせてくれるって」
「だから……?」


だから、自分と結婚すると言い出したのか。


「だからだよ」


そして桜庭は口角のあがった唇を、すっと持ち上げる。


「あんたの家のこと、調べさせた。両親とはほぼ絶縁状態で、高校生の弟との二人暮らし。あんたは弟を大学に行かせたいと思っているが、弟は家庭の事情で進学をあきらめている。教師も交えて何度も話し合っているが、弟の意志は固く、あんたは困っている」


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