イジワル社長は溺愛旦那様!?
あっと思った瞬間、もう一方の手であごを乱暴につかまれ、唇を塞がれていた。
「んっ……!」
慌てて顔をそむけるが、桜庭はずっとうわてだった。彼を押しのけようとする夕妃の腕をサッとつかみ、いとも簡単に暴れる夕妃の体をデスクの上に押さえつける。
「桜庭さん、やめてっ……!」
あと五分もすれば社員が来はじめる。
今はそういう時間なのだ。
「しーっ……」
桜庭は夕妃の上に乗っかるようにして動きを封じた後、薄く笑って夕妃の唇の上に人差し指を乗せた。
「ここで騒いで、損をするのは夕妃だよ」
「っ……!」
「見つかったら、ここにはいられなくなるだろうね。まぁ、俺はいいよ。関連会社なんてごまんとあるし、最悪他社でもやっていけると思う。でも、あんたはどうかな。今どきそんな簡単に、正社員で事務員の仕事なんて見つかると思う? 弟くんの学費とか、部活するのにもけっこうお金かかってるんでしょ。日々の生活費もギリギリっぽいのに、払える?」
桜庭は夕妃の痛いところを、まっすぐに、的確に突いていく。