イジワル社長は溺愛旦那様!?

「俺と結婚したらいいじゃん。どうせ男なんてみんな一緒だ。あんたが望むような男なんて存在しない。口ではなんとでもいえるけど、誰だって自分が一番大事だし、自分が可愛いんだ。誰も、あんたを守ってなんかくれやしない」


そして桜庭の言葉は、そのまま夕妃に呪いを吐くように言葉を重ねる。


「あんたさえ我慢すれば、すべてが丸く収まるんだ。あんたが考えるのをやめて、俺に服従して、ひざまずきさえすれば、弟は夢をあきらめないで済むし、まともな生活を送れるんだよ。弟を一人前に育てるのがあんたの義務なんでしょ……ね?」
「――」


夕妃の体から力が抜ける。

いくら自分が頑張ると言っても、朝陽は首を縦に振らない。
進学は必要ないと言い張ってしまう。
そんなふうに朝陽が自分に気を使うのは、金銭的に余裕がないからだ。

でもお金があったら――?


「……本当に、朝陽くんを、進学させて、くれるの……?」


駄目だと思っていても、その可能性があるのならと、考えてしまう。
自分が我慢さえすればいいなんて、ある意味簡単だと思ってしまうー―。


「いいよ。実際それなりに優秀みたいだし、一流どころの私立にだって、行かせてあげられるよ。俺、親の節税対策でマンションだっていくつか持ってるし、住むところも心配ない。生活費もだしてやるよ」



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