イジワル社長は溺愛旦那様!?

「俺こそ――きみに相応しい男でいられるよう努力するよ」


そして湊はゆっくりと、夕妃の結い上げた髪の下の、うなじにうやうやしくキスを落とした。


「湊さん……」


一瞬、優しいキスにふわふわと幸せな気分になったが、今の発言には少しばかりひっかかった。

湊はたいへんな努力家だ。秘書としてそれを一番近くで見ている自信がある。
なのにまだ努力をすると言われては、困る。
嬉しいが、無理はしてほしくない。

夕妃は慌てて後ろを振り向くと、思い切って背伸びをしてささやいた。


「あのね」
「ん?」
「私に甘えてくれていいから。たくさんわがまま言って。頑張りすぎはよくないです」


その瞬間、湊はふわっと、太陽の光を受けて輝くような笑顔を浮かべた。


「俺の奥さんは、俺を甘やかすのが上手だね」
「そう?」
「そうだよ。ありがとう」


湊はささやいて、今度は軽く唇にキスをする。
夕妃はそのキスを受けながら、ゆっくりと目を閉じた。


「ああっ、チューしてる!」
「やっぱり湊ちゃん、イチャイチャしてる!」


朝陽と閑のはしゃいだ声が、波の音に紛れて、聞こえた気がした。


ああ……。
幸せで。幸せで、泣けてくる。






【意地悪上司は溺愛旦那様!?】完結


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