イジワル社長は溺愛旦那様!?
「社長、厳しいもんねー。でも圧倒的に正しいから、ぐうの音も出ないんだけどねー」
(みんな口を開けば、社長は厳しいって言うんだなぁ。まぁ実際そういう一面もあるけれど)
夕妃は内心面白く思いながら、腕時計で時間を確認する。
それを見て、どこか慌てた様子で澄川が口を開いた。
「あ、あのさー、三谷さん、今から食事でもどうっ?」
「今から? ごめんなさい、もう遅いからタクシーに乗って帰ります。その……猫が心配だし」
夕妃は早口でそう告げ、ペコッと頭を下げると、そのまま会社の前の大通りに停まっていたタクシーに向かって手を挙げた。
「あー、そっか、そういえば猫飼ってるって言ってたっけ。じゃああまたの機会に」
「うん、みんなにも声をかけておきますね。ランチ会なら私も行けると思うから」
タクシーの後部座席に体を滑り込ませながら、夕妃は笑顔で澄川に手を振った。
あっという間に走り去るタクシーを見送りながら、澄川は肩を落とす。
「みんな……ランチ……はぁ……まったく相手にされてねぇ……」