チューリップ
「バン!!!!!」
動転している頭でも、すごい音だったのがわかった。
教室の扉を開くと教室にいた奴らが一斉に俺を見た。
その中に梨華の姿はなかった。
代わりにあったのは奴らの不安そうな顔と涙だった。
「どこ行ってたんだよ!!!!!遅ぇよ!!」
涙目の隼が俺に近づくなり大声を出した。
その声は震えていて、大きくて力強いはずだったのに、とても脆いものに聞こえた。
「梨華は…?」
「…か、階段から落ちて今から病院に運ばれるらしい…。
意識はないって…。」
泣いているのを隠すためか隼は顔を下げて言った。
「球技大会は続行されると思うけど、とりあえず教室で待機だって……。」
「どこの階段?」
「本館の職員室の前のとこのはずだけど…ってリュウ!!??」
向かわずにはいられなかった。
いつもより人が多い廊下を全速力で走った。
また守れなかった。
あのとき、梨華と一緒に行けばこんなことにはならなかったはずだ。
俺は愛しい人さえ守れないただのガキだ…。