チューリップ




リュウは何も言わない。


ただ前を向いて歩いている。





顔が見えないからどんな表情をしているのか、何を考えているのかわからなくて、不安になってきた。



(こんな話、やっぱり聞きたくなかったかな…。)





「ご、ごめんね!こんな話聞きたくなかったよね!


忘れて!」


「悪ぃ…。」

「え…?」




(悪ぃって、何が悪いの?)



リュウが口を聞いてくれたことは嬉しかったけど、悪ぃの意味が私にはわからなかった。






「俺が変なこと聞いたせいで、いやなこと思い出させちまって…。



ごめん。





お前だって俺の父親のこと受け入れてくれたんだ、忘れねぇよ。」










「…リュウ。」


「な!?泣くなよ梨華!マヂで悪かった!」




リュウは必死に謝ってきたけど、私は嬉しくて涙が止まらなかったんだ。





こんな話を受け止めてくれて



リュウが過去の話を出せるほど乗り越えてくれて






リュウと出会えて






涙が出るほど嬉しかった。
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