溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
照明に作られた影に、社長のすらりとした姿が浮かんでいる。
話しかけようとしてすぐに言葉を飲んだのは、彼の肩越しに雨賀碧と目が合ったから。
葛城社長と唇を合わせながら、挑発的に私と視線を交えている。
2人の関係をこの目で見たら、どういうわけか涙が滲んできた。
踵を返し、エレベーターに乗り込んで降りる。
壁にもたれたら、深く息が出た。
余裕綽々で私の気持ちを試すような言葉を吐いた男は、相応しい彼女がいたのだ。
偽物の告白に意識させられたのが悔しい。
可愛げのない返事をしてしまったと、今になって後悔が押し寄せてきた。
偽物だったとしても、他の人のものだと知ったら伝えられなくなる。
気持ちに応えられないとしても、好意を寄せられて嫌な気持ちではなかった。
――本当は、嬉しかったって、どうして言わなかったんだろう。