溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「それに、わざわざ社長さま自らお越しくださるなんて……きっと横野さんも他の社員の方々も桃園社長の背中を見ていらっしゃると思いますから」


 部下、それも一記者の失態を謝罪するために、わざわざ社長自ら出向くなんてあまり聞いたことがない。



 ゆっくりと持ち上がる頭。
 長身の割に、小さくて形のいい顔。
 ほんの少しだけ、日に焼けた肌。

 派手で人目を引く外見とは裏腹な、誠実そうな人柄に好感を持った。



「今日は白埜さんにお会いできてよかったです」

 力が抜けた表情は、罪深い。
 黒目に星が宿っているような、煌めく力のある視線に晒されたら、一気に私の緊張が煽られる。



「こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。横野さまにはお伝えしたのですが、原稿が出来上がり次第、1度目を通したいと葛城が申しておりますので、ご対応お願いいたします」

「畏まりました」


 桃園社長のオトナの余裕が、彼氏いない歴4年の身に染みていく。



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