溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「お詫びと言ってはなんですが、もしお好きでしたら是非」

 長方形の封筒が差し出されたけれど、金品はもちろんのこと、贈答品は受け取らないのが決まりになっている。


「申し訳ございませんが、お気持ちだけありがたくいただきます」

「そうですか……」


 すんなり引き下がるタイミングが、桃園社長のスマートさに拍車をかける。
 モノトーンを引きたてる赤いポケットチーフがやたら情熱的に見えて、思わず俯いてしまった。
 桃園社長のようなタイプの男性は、社内にいない。もっとカジュアルな雰囲気が社風に合っているせいだろう。




「でしたら、個人的にお誘いしても差し支えないですか?」

「え……」

 すぐに戻された視界に、余裕たっぷりの微笑みがある。


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