溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「私の気持ち、受け取っていただけるのでしたら」

 角のないつるりとした声が誘ってくる。


「あの……それはどういった」

「サッカーはお好きですか?知り合いから観戦チケットもらったんです」

「好きですが、観戦したことはまだ1度もございません」

「もったいないですね、行ってみませんか?有意義な時間になると思いますよ。お仕事にも生かせるかもしれませんし」



 上手いなぁ、誘い方。
 断る道をやんわりと絶たれていくのに、少しも嫌じゃないなんて。



「桃園社長の大切な方をお誘いされてはいかがでしょう」

「そうか、それもいいですね」


 スッと身を翻す返事に、どういうわけか残念に思うのは、久しぶりに誘われて伸ばしかけた手の引き際を間違えたのか……。


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