溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~

「では、貴女をお誘いしてもいいですね。大切な取引先の社員さんですから。お返事は今じゃなくても結構ですよ。名刺の連絡先にお答えいただけるのをお待ちしております」


 それでは、と言って席を立つ桃園社長を数分ぶりに見上げる。


 15分前、出会った時とは違う視線を向けている自分に気づいた。




「……あぁ、よかった。まだお帰りになられてなかった」

 ノックの音で揃って顔を向けると、応接のドアが開いて、葛城社長がやってきた。


「葛城社長!わざわざお顔を出していただくようなことでは」

「そういうわけにはいきませんよ。桃園社長には私が起業した当初からお世話になっているんですから」



 桃園社長とは真逆のカジュアルな服装なのに、失礼を感じないのは彼のセンスがいいからだろう。
 ダークグレーの細身のパンツに、発色までもやわらかな青系のニットがよく似合う。
 今日の取材前、新しく買ったものだと言って嬉しそうに社長が話していたのを思い出した。確か、色の名前は……白藍(しらあい)だったかな。



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