溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
連れられて、階下へ向かった。
過ごし慣れた広報のフロアに入るのが、こんなに気まずいと思ったことはない。社長と噂された時も、桃園さんとの関係が広まってしまった時も、いつも通りの自分でいられたのに……。
「おはようございます」
社長の挨拶で、騒然としていた始業前の部内が次第に静まっていく。
そして、彼の背中に隠れていた私に視線が集まると、誰からともなく憐れみと同情を向けてきた。
――痛い。こんなにも人の感情って刺さるものだったかな。
「千夏、おはよう。今日はゆっくりだね」
「おはようございます……」
できるだけ平常心で返した挨拶の声が震えてしまった。
泣きたくなる気持ちを抑えるのは慣れているけれど、この状況をやりすごしたり、視線を撥ね返す術がわからなくて、そそくさと自席へと向かうために、社長の隣を進む。