溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~


 ポケットに入れていた携帯が震えて、メッセージの受信を報せている。

『突然で悪いんだけど、今夜会えないかな』

 ようやく桃園さんからの返事が届いた。
 あれから何日経っているか分かっているのかと、了解の返事を送りつつ、不満は尖らせた唇に乗せた。




 約束した時間どおりに、待ち合わせた店へ。さすがに今日は迎えに行けないと言われて納得できるくらいには、私もゴシップ記事に慣れつつある。



「久しぶりだね。ごめんね、呼び出したりして」

 店員に案内されたやってきた私を見るなり、彼は開口一番に凛々しい表情を向けてきた。
 素敵だと、初めて会った時に感じたそれさえ、疑ってしまうようになった自分が悲しい。



「今日は、大変ですね」

「……そうだね。こうも騒がれてしまうと身動きがとりにくい。葛城社長も大変だったのが解ります」

 そうですか、と心で返事をしながら、ビールを頼んでメニューを閉じた。


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