溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
首をぐるりと回して、飾り気のない真っ白な天井と点在する照明に目をつぶる。
肩の凝りが和らぐようにしても、それは一瞬にして元どおり。新商品開発やメディア連携プロジェクトのために、PCをフル稼働させる。
プレスリリースの締切が近づいてきて、取材原稿をまとめるために1人残業する夜。窓の向こうに散らばるビルの灯りは、どこかの企業にも残業仲間がたくさんいる証拠だ。
今夜と明日くらいは定時で退勤して、誰かと一緒に過ごすつもりでいたけれど、そうもいかなくなってしまった。
もし、桃園さんといたら、さぞかし豪勢な夜になったんだろうな……。
未だに思い出してしまうのは、彼がどんなに最低な男性だとしても、輝きに満ちた別世界を見せてもらったことに変わりはなかったからだろう。
それが良い思い出に風化するまでは、時々こうして思い出してみたり、ちょっと傷をなぞってみたりするんだ。