溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「お疲れさま」
背後からの声に驚いて振り向くと、葛城社長がフロアにやってきていた。
座ったまま見上げれば、視線が交わる。慌てて逸らしてPCに戻した。
「1人で残ってたんですね」
「プレスリリースが近いので」
「次も大きく話題になるといいですが」
「少しでも力になれるよう、頑張らせていただきます」
「白埜さんの愛社精神には頭が下がります」
「やりがいのある仕事ができているので、こちらこそ感謝しております」
「そう言ってもらえると、適材適所が叶えられているようで安心です」
……何とも言えない会話に、とうとう2人とも黙ってしまった。
残業が珍しいわけでもないし、社長がこの時間まで残っているのも変わったことではない。外出や会食の予定がなければ、終日社内にいることもある。
背中に視線を感じつつ、指先をキーボードの上で踊らせつづけた。