溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「お久しぶりです、葛城社長」
「ご無沙汰しております」
「最近は他と手を繋がれているようですが、うちはもう用無しですか?」
「まさか、桃園社長にはお世話になってばかりでしたから、そんなことはしませんよ」
ちらりと見られて、背筋が凍る。
蛇のような目つきにゾクッとして身動きが取れなくなった。葛城社長にかける言葉も刺々しい。
「何もうちのライバルに出なくてもいいじゃないですか。喧嘩を売られているのなら買うまでだと思いましてね」
「こちらも色々と戦略があるんですよ。桃園社長ならご理解くださると思っておりましたが、やはりご気分を害してしまったようで申し訳ありません」
「理解はしていますよ。ただね、葛城社長の協力なしに成り立たないものがあるんです。それは御社も同じでしょう」
「えぇ、お互い様ですからね」
微笑み合う2人の空気が和らいだところで、ドアのほうへとつま先を向けると、社長が後ろ手で腕を掴んできた。
桃園さんがどんな人なのか、分かっているつもり。
過ごした時間は短いけれど、素敵な景色を見せてくれた人。
そして、裏切ったくせに素知らぬ顔で現れ、謝りもしない最低な男。