溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「白埜です」
「遅くにごめんね、葛城です。今、話せる?」
電話越しの彼の声が、想いを強烈に刺激する。
はい、と答えると水のような音と、軽快な音楽が聞こえてきた。
「社長は今どちらにいらっしゃるんですか?」
「家だよ。ちょうど風呂に入ってて」
「そうですか。ごゆっくりされているようで何よりです」
って、タイミング!せめて湯上がりでもいいんじゃないでしょうか?
淡々と返事を返しつつ、電話のこちら側で1人動揺する。
社長室で、何の躊躇もなく彼が着替えたあの時が思い出される。男らしくて綺麗な肉付きが、無自覚に誘ってくるみたいで……。
「よかったら、一緒に入る?」
「っ?!」
勢い余って、終話を選んでしまったことに気づく。
……やってしまった。用件も聞かずに、事もあろうか社長からの連絡を切るなんて、失礼すぎるだろう。
慌ててリダイヤルを選び、呼出音に耳を澄ませた。