溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
「お昼は食べた?」
「軽く食べました」
なんて、緊張で食事は喉を通らず、フルーツ入りのシリアルで済ませただけ。
他愛ない会話をしながら自宅の前を発ち、大通りに出た車は私たちを2人きりにする。適度に冷えている車内は、彼の日常で溢れている気がして、あちこちに視線を泳がせてしまった。
「ずっと思ってたんですけど、素敵な車ですよね」
「ありがとう。すごく欲しくて買ったから、そう言ってもらえると嬉しいよ」
運転している彼の横顔に視線を何度か向けて、何を話したらいいのかと考えてしまう。
気を遣わずに黙っててもいいって言ってくれそうだけど、何か話したいのに、どんな話題なら彼が笑ってくれるのか……。
それに、彼にとっては休日の眼鏡姿が普通だとしても、私にとってはさらに想いを加速させられる小道具にしか思えない。