溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
夏空が夕暮れになる前に車を降りて並んで歩く。
デニムに白いTシャツ、グレーのカーディガン。飾り立てていないシンプルが彼に良く似合っている。
――彼の隣に、私は似合っているのかな。
「日が傾いても、全然涼しくないな」
「そうですね。でも、夏が長いのはいいですけど」
「白埜さん、夏派?」
「どちらかといえば」
「俺も、夏が好き」
彼はまたしても、容易に好きを放り込む。他意はなくても、私を意識させるには十分な威力だ。
軒を並べた屋台の間を、子供や大人に紛れて歩く。
楽しいのに上手く笑顔になれなくて、時々俯いてしまうのがもったいないって分かってる。だけど、何をどうしても収まってくれない緊張が、私から笑顔を奪うんだ。